格安航空券 国内を考えてみる
スーツケースをはじめ各種旅行カバン、変圧器、プラグのほか、海外仕様の電気製品などの物販も取り扱うが、土産物やタオルも含めたすべての売上高は、年間三五○億円にものぼっている。
学校経営や教育文化の領域にも東京・巣鴨にある「JTBトラベル&ホテルカレッジ」は、その名の通り、旅行とホテルのプロフェッショナルを育成する専門学校だが、JTBグループの一員だ。
文部科学省認可の学校法人「国際文化アカデミー」が運営しており、毎年、優秀な学生を業界に送り出している。
創立二五周年を迎えたこの学校では、○八年度から新たにブライダルコースも開設される予定になっている。
JTBグループが就職も斡旋するため、就職率は一○○%である。
JTBが手がける教育の分野は、学校経営だけではない。
「株式会社JTB能力開発」(東京都豊島区、資本金一億五○○○万円)では、九五年から「旅行地理検定」を自らが実施している。
近ごろでは、「ご当地検定」なるものも登場し、ちょっとした検定ブームに沸いているが、そうした検定の問題も作成している。
留学やホームステイを専門に手がける「株式会社JTB地球倶楽部」(東京都新宿区、資本億円)の場合、語学留学や正規留学のほか、おけいこ留学、スポーツ留学など、取り扱いまた、近ごろでは、定年を迎えはじめた団塊世代を呼び込もうと、「産学連携」によるシニア向けサマーカレッジの開設も相次いでいる。
五○歳以上を対象にした、国立大学の生涯学習プログラムで、北海道大学、弘前大学、岩手大学、信州大学、岐阜大学などが参画している。
学生が夏休みの期間に、大学施設を利用して、地域の人たちと交流をしながら学習する「交流型の教育事業」を、○六年夏から本格的に開始した。
JTBが、「カルチャー事業」への本格参入したのも○六年のことで、「JTBカルチャーサロン新宿教室」を四月にオープンさせた。
旅の専門家を講師陣に、テーマも「世界一周クルーズの楽しみ方」や「世界遺産学」など、夢を駆り立てるものだ。
いしずえ交流文化産業の礎となる取り組みは、これだけにとどまらない。
作家や俳優、映画監督など各界著名人を講師に招いての「JTB旅行文化講演会」は、JTBが主催し、全国縦断型の講演会として好評を博し、開催回数も三○○回を数える。
また、○五年には「地域の魅力を全国へ発信」「新しい出会いへの創造」をテーマに、「JTB交流文化賞」を創設した。
旅の体験記(個人を対象にした「交流文化体験賞」)や、観光への取り組み(組織、団体を対象にした「交流文化賞」)を一般公募して、優秀な作品を選出し、受賞作品には賞金を与えると同時に、諸提案の実現化への道も模索する。
これらを見れば、グループ全体の事業領域が旅行業の周縁部分に放射線状的に展開されはじめているのが分かるだろう。
新興ネット業者の台頭に猛チャージをかけたJTBのIT革命ニューョークの同時多発テロが発生する前年の二○○○年は、日本人の海外旅行者数が一七八二万人と、過去最高を数えた。
海外旅行の格安化が進んだためとはいえ、職場旅行をはじめとする団体旅行需要が減少に転じ、FITへと傾斜しはじめた時期である。
国内旅行は、安くて早いネットによる宿泊予約が人気を呼び、新興ネット業者が急成長を始めた。
航空会社各社は、インターネット直販体制を拡充し、チケットレスを普及させはじめ、旅行会社の店頭を訪ねる人も減少に転じた。
団体旅行営業と店頭販売に重点を置いてきたJTBの従来型の営業手法も、消費者の側からは時代遅れに見えはじめていた。
ところがJTB社内では、インターネット参入の是非になかなか決断がつかなかった。
インターネットで販売を始めたら、店舗での売上げが落ちるのは必至だ。
この責任をどう取るのか。
独立採算制を導入し、現場至上主義できただけに、インターネット参入による「共食いの構図」を想像して消極的な声があがった。
こうした社内世論の中で、二○○○年にヤフーとの合弁会社「たびゲーター」を設立した。
小さな一歩ではあるが、ネット世界への入口に立った。
しかしながら、店頭営業を中心に設計されたシステムには制約も多く、マーケットの動きに機敏に対応するには至らぬままネット専業の他社に大きな後れを取ってしまった。
消費者不在の社内論理がまかり通ったばかりに、森を見ずして木ばかりを見る状況に陥ってしまったのだ。
インターネットのすごさは、二四時間利益を生む点にある。
リアル世界と違いコストもほとんどかからないから新興の参入業者も多く、M&Aも活発だ。
業界勢力図は次々と塗り替えられ、新興ネット業者のつばぜりあいの中に、JTBは入ることすらできないというジレンマがトジェィティービーヒ社長のHSである。
八一年にJTBに入社した北上は、入社九年目の九○年から二年間、社外留学制度で慶礁ビジネススクールに入りMBAを取得した。
当時、米国市場で話題になりはじめていたインターネットという仕組みを学ぶうちに、北上は「商機あり」と直感したという。
ところが、米国で発表されたある論文に遭遇しショックを受けた。
「インターネットの普及で、近い将来、エージェントと名が付くものは消滅する」というのである。
論文には、消滅する業種として広告代理店や旅行会社、弁護士やモデルなどのエージェントが例示されていた。
希望に燃えて入社した旅行会社に将来はないのか、転職を考えるべきか、など自問自答しながら、北上は逆に「エージェントだからできることを構築してみよう」と考えた。
九二年、職場復帰と同時に「市場開発室」に配属された北上は、新しいサービスや新業態の開発、新規事業案件の企画などに携わることになった。
社内の″異端児″が集うセクションだけに、先輩らからたくさんの刺激を受けた。
しばらくすると北上は、価格競争に陥らない「勝ちのビジネスモデル」構築に力点を置くようになり、出張手配の代行業務を包括的に請け負う「ビジネス・トラベル・マネージメント」分野の開発に着手した。
(これは後に米国カールソン・ワゴンリー・トラベルとの合弁会社設立につながった)。
そうこうしているうちにも、ネット専業の旅行会社が次々と誕生する。
どうにかしてネットを使った事業を社内で始められないものかと、その糸口をさぐっていた。
九四年には、すでにIT戦略に関するJTBのあるべき姿を立案してはいたが、旧来の制度や仕組みを覆すには時間も要った。
九八年、旅行商品の参照から予約、決済までを行える会員制サイト「JTBINFO・CREW」を、細々ながらも開設した。
利用者の多くはJTB店舗の閉店後に活用するというものだったが、それでも社内の慎重論は根強かった。
北上は、そうした声をよそに、ITビジネスの現状やシステム開発の重要性を説いてまわり、理解を求めた。
○三年四月、北上はついに「WEBトラベル事業部」を立ち上げる。
足かけ一○年の事業化で、IT隆盛の波から三年遅れてのスタートとなった。
そして、このときを境にJTBは、ものすごい勢いでIT事業に資本投下を続けることになる。
「ニューFITシステム」と呼ばれる新予約システムの導入を決めたのは、○五年のことだ。
グループの一三○○余の支店に、順次設置を開始した。
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